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「隼(はやぶさ)の鷲掴み」 [ONE PIECE(Pell×Vivi)]

 この作品は、不定期更新で連載していく「ONE PIECE」のアラバスタ編に登場した、ネフェルタリ・ビビと隼のペルのNL小説です。本家様の作品・著者様・出版社並びに、その他公式関連団体とは一切関係はありません。そして捏造、場合によってはキャラクターの崩壊・オリジナルキャラクターの登場・死ネタがある場合もございますので、予めご了承下さい。

<「隼(はやぶさ)の鷲掴み」の登場人物>
 ネフェルタリ・ビビ♀…7歳。アラバスタ国王・コブラのひとり娘で、王女
 隼(ハヤブサ)のペル♂…19歳。アラバスタ王家に使える護衛隊戦士。
 (守護神ファルコン)   世界に5種しかないトリトリの実「ファルコン」の
                能力の持ち主。アラバスタの守護神のひとり
 ジャッカルのチャカ♂…20歳。アラバスタ王家に使える護衛隊戦士。
 (守護神ジャッカル) 悪魔の実「ジャッカル」の能力の持ち主でペルの親友。
              ペルと共に、ビビの護衛兼子守をよく引き受けている 



『隼(はやぶさ)の鷲掴み』



「っ……!」
 椅子を引いた途端、シッと唇に人差し指を立てられ、咄嗟に声を飲み込んだペルは、執務机越しにいる上司が、自分に背を向けていたことに感謝した。が、その上司と向かい合うジャッカルの視線は、ほんのかすかにだが、目ざとくもすぐにペルのほうへと動いた。
「それで、ビビ様のピアノの護衛役だが……」
 それまでの話を切り上げ、ふたりに相談するように上司が振り返る。すると、ペルの足元にいた青い髪の少女が、もぞもぞと動き出し、それまで隠れていた彼の執務机の下からわずかに這い出ると、何かを訴えるように、ペルの衣の裾をくいくいと引っ張り始めた。
「……?」
「人が一向に決まらんのだよ。いい機会だから、新米も少し駆り出そうかとも思ったんだがな。ビビ様、最近練習時間が急に増えたせいか、今日も宮殿中を逃げ回った挙句……」
「もしや、今も見つからないので?」
 こめかみを押さえた上司に、相棒でジャッカルのチャカが尋ねた。その問いに、上司は大きなため息をつきながら、小刻みに首を縦に振る。それに対しチャカのほうは、上司の目を盗んで、ちらりとペルを見たところから察するに、どうやら既に気付いているらしい。
「やはり新米だけでは、どうにもビビ様に撒かれてしまうらしい。まぁ、王族や上官以外が立ち入れないような場所に逃げられては、新人ではもう、どうしようもないからな」
「なるほど。フラストレーションを発散できる人間でないと、お相手は務まりませんね」
「……っ! ビっ……」
 それまで上司とチャカの話をただ黙って聞きながら、裾を引っ張られていたペル。その彼のすねを今度は、足元の少女が思い切りつねった。戦士とはいえ、すねを力いっぱいつねられると流石に痛いうえ、その意味するところが分からないので、ペルは脂汗をかく。
「どうした、ペル」
「い……え、その……ビ……ビビ様の護衛は、毎回同じ人間にお任せを?」
 うっかり口をついて出そうになった少女の名を、何とかごまかした。だが勘のいい相棒は、話題の張本人であるその「ビビ様」が、ペルの足元で何をしているのかも分かっているようで、必死で笑いを噛み殺している。笑ってないで助けろ、と睨むが無視された。
「そう回の多いことではないので、同じ人間に任せられれば、それに越したことはないが」
 ことの発端はひと月前。宮廷ピアニストであるビビのピアノ講師が、レッスンにおけるビビのモチベーションが下がっていると報告した。いくら教養のためとはいえ、まだ幼いビビにはそれが分からない。確かに、発表の場でもなければ、練習に身は入らないだろう。
 そこで国王が、町で行われる合奏会に参加させてはどうか、という提案をした。
 講師を交えた詮議には、他の生徒を宮廷ホールに招いて、発表会を行う計画もあがった。だが、人を招くよりこちらから出向いたほうが、予算も動かす護衛隊の数も少なくて済む。
 そのため、本番と合同練習はビビが宮殿から町へと出向き、護衛役はその送迎と、ホールの警備をすることで話がまとまった。何事もなければ、危険もない実に楽な仕事だ。
「しかし、毎回付いて行けて、尚かつホールをくまなく調べて来れる人間となるとな……」
 上司がふたりの前で、指で顎を擦って唸り始める。
 ビビはまだ7歳。活発で人懐こい性格ではあるが、町で見ず知らずの、しかも大勢の子供と初めて演奏することに、流石にナーバス気味だという。それに、歳の割りに利発とはいっても、やはりまだ幼い為、一度臍を曲げると手に負えない面もある。
 彼女が他の子供達と上手くやっているか気を配りながら、本番の警備の配置に必要な情報を調べ上げ、更に何かあった際には、確実にビビを守れる強い戦士となると、条件を満たす人間は限られてくる。しかし、優秀な者はそれだけ多忙なので、暇がないのが現状だ。
「ペル、お前でいいじゃないか。剣もアラバスタ随一の腕があるわけだし、万一のことがあっても、お前なら飛んで連れ帰ることもできる。後はビビ様がご承知すれば問題ない」
 何となく嫌な予感はしていたが、予想通りの展開にため息をつきながら、ちらりと視線を落としてみる。すると足元の少女は、音を立てずにぱちぱちと拍手をして、さすがチャカだわ、と唇を動かし、こくこくと頷いている。なるほど、それでここにいらしたのか、とペルが苦笑すると、私でよければ、と上司と足元の少女に向かい、了解の意を表した。

「全く、あなたという人は」
 この執務室で仕事をする人間は、幸運なことに、今は皆、昼休憩に出ていた。気を利かせたチャカが、部屋から上司を連れ出してくれたおかげで、今はペルとビビふたりきりだ。
「えへへ。でもペルが悪いのよ。てっきりペルが一緒に来てくれると思ってたのに……」
 膝を付いて椅子を引き、出てくるように促したペルに向かって、その彼の執務机の下から青い髪の少女が、きゃっ、と飛びついた。何故自分が悪いのかは、さっぱり分からない。
「ならばビビ様から、国王様や、イガラムさんにでもお口添え下さればいいものを……」
「言ったわよ、もちろん。でもパパもイガラムも、ペルとチャカはしゅっせしたばかりで、なれないお仕事してて、だから、つれだすのはかわいそうだよ、って言うから……」
 イガラムとは、かつてのアラバスタ最強の戦士で、先王の代から仕えている大ベテラン。先程執務室に姿を現した上司よりも、更に上の上官で、現護衛隊の副官をしている。
「国王様とイガラムさんが……ですか」
 永きに渡り、この国の守護神とされてきたファルコンとジャッカル。その悪魔の実の能力を携えたふたりが、奇しくもほぼ同時に、同世代の間柄で現れたのは、この国の恒久の歴史の中でも非常に稀なことだ。故に、まだ十代の、本来ならば一平卒でしかないペルを、国王もイガラムも随分と気にかけており、ペル自身も身に余る光栄だと思ってはいた。
 だがやはり、過保護に扱われることは、なるべくなら避けたい。偶然に、悪魔の実の、しかも守護神ファルコンの能力を頂き、それによりただでさえ高待遇を受けているのだ。
 寧ろ、普通の人間以上の課題を課して欲しい、とさえペルは思う。
「そうよ。ねぇ、ペル。もしかして、やっぱりいや? 本当にたいへんなら、わがまま言わないわ。パパに言って、ほかの人におねがいする。本当はペルと一緒に行きたいけど」
 我慢する、としょんぼりと肩を落とす目の前の少女。彼女は国王の娘、つまりは王女だ。
「いいえ、大丈夫ですよ。ましてや、あなたをお守りできる任務が、嫌な訳はありません」
 愛おしそうに髪に触れたペルの手に、心地よさそうに頭を預ける幼い王女。この愛くるしい小さな恋人とも言える存在に、一緒にいたい、と言われて、断る理由はペルにはない。
「ありがと。じゃぁいっぱい練習しなきゃ。ペルに、はずかしいって思われたくないもの」
 元気に立ち上がった王女の頭をなで、同じく立ち上がったペルは、ビビをエスコートするように扉を開ける。すると、いつからそこにいたのか、まるで待ち構えていたかのように、チャカが腕を組んで立っていた。彼の姿を認めたビビは嬉しそうにその膝に飛びつく。
「チャカ! さすがチャカだわ! あなたはいつも完璧ね! ありがとう!」
 今回チャカの機転で、ことが上手く運んだことを理解していたビビに、チャカは、
「勿体無きお言葉です、ビビ様。では、ビビ様のご意向、早速ご報告に参りましょうか」
 とエスコートを代わると、国王である彼女の父の元へと向かう。大きさの違うふたつの背を見送ると、ペルは微笑して執務室に戻った。彼女の護衛という新たな任務を全うするには、これから執務時間を増やし、且つ倍のスピードで仕事をこなす必要があるのだから。

「妬けるな」
 夜遅く、やっと仕事を終えて執務室を後にしたチャカが、施錠した鍵を戻すために、共に回廊を歩くペルに向かって、からかうように言った。しかし、唐突に何だ、と尋ね返したペルに、意味が全く通じていないことを見て取ったチャカは、呆れながらも苦笑する。
「鈍い奴だな、相変わらず。我らが愛らしい王女の寵愛を、あれほど受けておきながら」
「俺だけじゃないだろう。寧ろお前のほうが、お気に入りのうえに頼りにされてる」
「頼りか……まぁな。確かにお前よりかは、ビビ様の仰ることが理解できてはいるかもな」
「お前な……人が褒めてるのに、その言い草は……」
 すまんすまん、と笑う親友の肩を、少しはどついてやろうかとも思ったが、昼間のことといい、ペルはいまいち強く言い返せない。悔しいが、全く彼の言う通りだった。
「だがな、頼りにされてるのと、傍に居て欲しい、と思われることとは、また別だろうよ」
「どこが別なんだ」
「お前な……そこから説明せにゃならんのか」
 あれだけ分かり易いアプローチに気付かない理由がこれか、とチャカはため息を吐く。
「全く性質の悪いことだ。無意識でお心を鷲掴みにしているのだからな、隼の癖に」
 いったい何の話だ、とますます混乱する隼の手から、執務室の鍵をひょいと取り上げ、
「鍵は俺が返しとく。これからデートなんでな。俺はこのまま出かけるから、また明日な」
 チャカはひらひらと手を振って、行ってしまった。
 質問の答えは何ひとつ得られずに、置き去りにされたペルが、考え込むことしばし。
 突然、腹に鳴った空腹の報せに、そういえば夕飯がまだだと気付き、考えるのを止めた。

-END-

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